国境を越えて
アラビア海で泳ぎ、ヒマラヤの氷河へ登り、55歳の男はイスタンブールをめざす
日が暮れはじめた。赤く溶ける夕陽が西のアラビア海に沈んでゆく。凪いだ洋上にに 残映が撒き散らされ、空が灰色を増しながら茜色に染まってゆく。
正面のインド洋に目を移すと、その上空はまだ夕暮れのほの暗さに覆われ、さらに転 じて東のベンガル湾を眺めれば、すでに空も海も夜の闇にひたされていた。夕焼けと、 日暮れと、夜とを同時に眺めているような、不思議に心の安らぐ情景だった。
(インド最南端コモリン岬の夕暮れより)
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